失敗のはなし
仕事の帰りにネイルサロンに行こうと思って、
会社のデスクで予約をした。
金曜日だけどものすごく疲れきっていたので飲みに行く元気はもうなく、せめて爪を綺麗にしてから家で休もうと思っていた。
いざ退勤してサロンに行ったらなんと予約が入っていなかったとのこと。
ぼんやりしてホットペッパービューティーの予約ボタンを押し忘れていたようだ。
なんだか腰くだけしてしまって、しかしそのまま帰る気にもならず、ふらふら喫茶店に入って、今である。
そういえば、今日は失敗が多かった。
朝から寝坊をしてこそこそとオフィスに入ったし、
なんだか服の組み合わせが微妙だったのでトイレに行くたびに鏡を見て後悔した。
締め切りを守れなかったタスクがいくつもあった。
喫茶店のソファでようやく人心地ついたが、なんだかもうしばらく立ち上がれないような気がしている。
「失敗を恐れるな」
とか
「どんなにすごい人も挫折をしている」
というのはわかるんだけど、
そういうときに語られる「失敗」って
なんかかっこいいやつで、色気すらあるような気がする。
のちにドキュメンタリー番組を盛り上げるネタになるような失敗。
でも実際の失敗ってすごく小さかったり無様だったりして、
しかも何のプラスにもならないような気がして、
なのにそれなりに疲弊するから厄介だ。
毎日全力で生きて色んなものを取りこぼして、金曜の深夜に1人で喫茶店に座って我に返る。
東京で1人で生きていくのは自由で楽しくて過酷だ。
毎日むちゃくちゃな方向に100m走をしているようで、どこへ向かっているのかはわからないのにとりあえず進まないと死ぬような気がしている。
毎日すごく疲れるのに、それでもまだ東京で消耗したいと思ってしまう。
何だか麻薬みたいだな、と思ったところでもう24時を回っていたので、
なんとか重い腰を上げて席を立った。
レジに伝票を出したと思ったら手に持っていたのはドリンクメニューだった。
とりあえず今日は早く寝ようと思った。